ワインに賞味期限が存在しないのは一般的ですが、未開封の状態で室温下で10年経過しても、保存状態によっては飲用可能なケースがあります。ただし、未開封であっても劣化することがあり、その結果として風味が低下することが起こり得ます。
市場に出回っているほとんどのワインは飲みごろになっており、特にスーパーなどで購入できるものは、白ワインは購入から2年以内、赤ワインは3年以内に飲むことが推奨されます。
一方でワインを開封した後は、味や香りが速やかに劣化し始めるため、開封した日に完飲するのが最も良いとされています。
ここからは、ワインの賞味期限の有無や未開封の状態で長期間室温に放置したワインの飲用可否について、さらに詳しくお伝えします。
未開封のワインの賞味期限について
多くの食品に賞味期限が定められている中、ワインには賞味期限が設けられていません。これは、ワインが瓶詰めされた後も、熟成が進行し、風味が変化することを受け入れているためです。ワインは腐敗することはなく、適切に保存されていれば、たとえ10年間常温で放置された場合でも飲むことが可能な例が多々あります。
それでも、ワインには飲み頃と言われる期間が存在します。これは賞味期限ではなく、風味が最も引き立って、美味しく感じられる時期のことを指します。ワインの種類により、時間をかけて熟成させることで香りや味わいが向上するものもあれば、若いうちに飲まれることを前提としたフレッシュな味わいを楽しむべきものもあります。
明日大きなイベントがあるのでご褒美に用意しました。賞味期限200年(未開封)とも言われますがあっという間に開けます。ワインは眺めていても美味しくないのです。 pic.twitter.com/oghQp4vpx5
— 上 直 (@moasmaster) August 5, 2023
そのなかには、10年以上経った後に最高の味わいになるよう設計されたワインまであります。美味しくワインを楽しむには、これらの飲み頃を見極めることが欠かせません。飲むべきタイミングを逃してしまうと、往々にして風味が劣化してしまう恐れがあるのです。
未開封のワインの飲み頃
ワインボトルには、収穫年が記載されており、そこから熟成期間がどの程度経過しているかが確認できます。
お手頃価格(2000円程度)のワイン
比較的お手頃な価格帯のワインは、購入した時点で最適な飲み頃になっていることが多く、即座に楽しむことが推奨されます。また、ある程度の期間置いても問題なく飲用可能です。
赤ワイン
通常の赤ワインは、2~3年保管した後に味わうと良いとされています。ただし、ボジョレーヌーボーのようなワインは、購入後1年以内に飲むのが適しています。
白ワイン
白ワインの場合、1~2年間の保存を目処に消費することが望ましいです。また、フレッシュな白ワインは早めに開けた方がその魅力を存分に堪能できます。
長期熟成タイプの赤・白ワイン
熟成を経た赤ワインや白ワインは、3~5年を目処に保管することで味わいが深まるとされています。さらに、10年から20年の長期熟成が可能なワインも存在します。赤だけではなく、白ワインも長期熟成によりそのコクを引き出すことができます。
スパークリングワイン
細かな泡立ちと炭酸が特長のスパークリングワインは、長期保存により泡が抜けたり、コルク部分が劣化することがあるため、購入後早めに飲むことが推奨されます。未開封であっても、1~2年以内に消費することが好ましいでしょう。
未開封ワインの保存方法についてのアドバイス
ワインは賞味期限がないとはいえ、間違った保存方法では品質を損ねてしまいます。ですから、長期保存する際には下記の環境を整えることが重要です。
- 温度:赤ワインを保存するときは10~20度が理想です。白ワインの場合、7~14度の環境が適しています。例えば床下収納庫や、部屋の涼しい場所にある押し入れやクローゼットなどが考えられます。
- 湿度:湿度は70%前後を保つことが望ましく、これによりワインのコルクが適切な湿り気を維持できます。
- 光:日光や蛍光灯の光は避けるようにしましょう。ワインを新聞紙で包んで保存することが、光から守る一つの手段です。
- 振動:振動はワインに化学変化を引き起こし、品質劣化の原因になるので、避けるべきです。
- 匂い:強い匂いのするものの近くには置かないようにしてください。ワインのコルクは匂いを吸収してしまう性質があります。
ワインセラーがあれば最適な保存方法ですが、それがない家庭は多いでしょう。ご自宅の地理的条件や構造に合わせて最適な場所を見つけましょう。どうしても適切な保存場所がない場合は、冷蔵庫の野菜室での保存が良いでしょう。
ワインの常温保存には警戒が必要
購入したワインをすぐに飲まないで、適切な時期まで家庭で保管する際、普通の室温環境では注意が必要です。一般に、赤ワインの理想的な保存温度は10~20度、白ワインについては7~14度とされています。しかし、多くの場合、日本の室温はワイン保存にとって最適とは言えません。
開封後のワインの適正消費期間
ワインを開封した後は、風味や香りがすぐに低下するため、理想的にはその日のうちに飲み干すことが推奨されています。未開封の場合、厳密な賞味期限は存在しませんが、開栓することで酸化のプロセスが始まります。そのため、保存は冷蔵庫で行い、早期に消費することが好ましいです。
ワイン開けると賞味期限の関係もあって1日2日で飲み干してしまうがワインの気分なのでしゃーなし pic.twitter.com/o3JWOJTJdC
— たくみ (@Exmarick) September 3, 2024
ワインの種類による賞味期限の目安
以下にワインの賞味期限に関する一般的な指針をご紹介します。
手頃な価格帯(2000円程度)のワイン
できるだけ早く飲みきることを推奨します。冷蔵保管により、1週間程度持ちますが、品質には個体差があるため保証はできません。
赤ワイン
開封後は3日から5日以内に消費することが望ましいです。特にライトボディの赤ワインは酸化が早く、3日程度で飲むと酸味が増す可能性があります。対してフルボディやミディアムボディの赤ワインは開封後でも5日間は風味の変化を堪能することができますが、口当たりが重くなることもあるので、出来るだけ早めの消費を推奨します。
白ワイン
白ワインの賞味期限は、辛口と甘口で異なります。辛口は開けると酸化しやすく、開封後は3日以内に飲みきることを推奨します。甘口タイプの場合は、条件によっては1か月ほど保存が可能なものもあります。
スパークリングワイン
開封後はその刺激的な炭酸ガスが逃げやすいため、なるべく消費するのは最終的な飲用日である開封日から翌日までとされています。
開封後のワインの保存法
開封してしまったワインは、酸化が進みやすいので注意が必要です。味の変化を抑えるためにも、ワインが空気と接する面積を小さくすることが大切です。ここでは、開封後のワインの保存に役立つポイントをご紹介します。
- 栓をして空気との接触を減らす
開けた後のワインは、元のコルクか専用のワインストッパーでしっかりと閉じましょう。コルクは開けたときとは逆の面を下にして差し込みます。また、コルクを乾燥から守るためにラップで包む、瓶を日光から守るために新聞紙で覆うなどの工夫も有効です。 - 冷蔵庫内での適切な置き方
理想のワイン保存温度は13〜15℃とされていますが、一般的な冷蔵庫内ではそれ以下になることが多いです。保存の際は、ボトルを立てた状態で、できれば野菜室など比較的温度が高めの場所に置きましょう。横に寝かせてしまうと、空気と接する面積が増え、ワインの劣化が進む原因になります。 - 余ったワインは小瓶へ
飲み残しのワインは酸化が進みやすいので、量が多くない場合は小サイズのボトルに移して保存するのがおすすめです。この方法だと、冷蔵庫内でのスペースも取らずに済みます。
ワインは腐るのか?
開封していないワインには賞味期限が設定されておらず、腐敗することは基本的にございません。しかし、時間の経過と共に品質が低下し、風味に変化が生じることがあります。
劣化したワインは、不快な臭いがしたり、酸っぱさや渋みが増してしまうことが一般的な現象として挙げられます。
ワインの劣化要因について
ワインの味わいを損ねるさまざまな劣化の原因をご説明します。主な原因としては、ブショネ、酸化、そして振動や温度の変化が挙げられます。
ブショネについて
ブショネとは、コルクの臭いがワインに移ってしまう現象を指し、湿った段ボールのような臭いの例えがよく使われます。微生物や菌、コルク製造時の化学反応等が原因とされ、保存状態に関係なく発生することがあります。人体には無害とされていますが、ワインの風味を損ねる要因となります。
酸化による劣化
ワインは少量の酸素と触れ合うことで、ゆっくりと酸化し熟成します。適正な熟成は望ましい酸化ですが、望ましくない酸化も発生します。一定の温度を超えた保存状態や、コルクの不備により多量の空気が混ざることで、劣化の原因となる酸化が進行します。
振動と温度変化
安定した保存状態を保つことで、ワインはその真価を発揮します。しかし、振動が加わると粒子の安定性が失われ、ワイン本来の甘みが感じられなくなることがあります。ワインを品質良く保つためには、適切なワインセラーなどで一定期間安置し保管することが肝要です。
また、ワインは温度に極めて敏感であり、特に白ワインや赤ワインには各々適した保管温度が存在します。室温が30度を超える環境では、ワインは味わいを損ねる可能性があり、結果として液漏れなどの問題を起こす恐れもあります。それでも短期間の高温保存であれば、12℃程度で数日間静置することで品質を一定程度回復させることが可能です。
ワインの飲み頃と保存について
多くのワインには、賞味期限の記載が見当たらないことが一般的です。未開封の状態で常温に長期間、たとえば10年程度保存されていたワインであっても、飲むことができる場合がほとんどです。
未開封のワインが腐る心配はほぼありませんが、時間の経過とともに色や香り、味わいなどが変わり、品質が劣化することがあります。
一般的に市場で販売されているワインは、購入時点ですでに飲むのに適した時期とされています。このため、特に白ワインは購入から2年以内、赤ワインは3年以内に飲むのが適切とされています。
ボトルを開封した後は、味覚や香りの劣化がすぐに進むため、開封したその日に飲み干すことが最も良いとされています。
ワインは瓶詰めされた後も熟成を続ける性質を持っており、10年以上経過してから飲み頃に到達するものも存在します。「ワインは生きもの」と表現されるように、適切な環境での保存により、その美味しさを堪能することが可能です。
皆様が購入されたワインを最適なタイミングで味わえるよう、今回ご紹介した情報が参考になることを願っています。