今日では耳にすることの少ない表現、「煤払い」という言葉をご存じでしょうか。これは、過去に年中行事として行われていた風習の名称です。
お寺や神社に関わる人々や、時代劇ファンの方々なら、「煤払い」と聞いて「ああ、大掃除のようなものか」とピンと来るかもしれません。
この記事では、「煤払い」の意味と歴史的背景、さらにそれが一般的な大掃除とどのように異なるのかについてご紹介していきます。
煤払いとは？
「煤払い」とは、かつて旧暦12月13日に執り行われていた日本の伝統的な年中行事です。現代における「大掃除」に相当する行為であったと言えます。
「煤」とは、火を焚く際に発生する煙に含まれる炭素の黒い微粒子のことをいいます。より身近な例としては、バーベキューの際に利用する炭を手にした時、それが炭素を多く含んでいるため手に黒い粉が付くことがあります。それが「煤」と称されるものです。
今日ではガスやIHのコンロが一般的ですが、昔の日本ではかまどや囲炉裏が調理や暖房の主役であり、照明には電気ではなく行灯が使用されていたため、屋内の天井や壁には煤が堆積しやすい環境にありました。
そのため、昔の人々は新年を清浄な空間で迎えるため、年末に積まれた煤を除去する掃除を行う習慣がありました。
煤払いの起源について
煤払いには古くから、歳神様を迎え入れるための厄除けとしての大切な役割があったとされています。実は、煤払いの歴史は平安時代にまでさかのぼります。この時期の宮中行事の一環として、以前から存在しておりました。
年末の煤払いがある半日ほどしか拝見出来ないお薬師様！そもそもお寺が一般の参拝を歓迎してなかった雰囲気すらあったので貴重な機会。
— カニカマスキー (@tochi_aoba) October 2, 2024
特に、「延喜式」と呼ばれる文献には、煤払いの作法に関する記述が存在します。この「延喜式」とは、法令集であって、当時の規範や戒律が詳細に記された重要な書物です。
当時の人々は吉凶を占い、その結果に従って日々の行動を決定する、といった生活を送っていました。このような文化の中で、煤払いが重要な書物に記述されていることから、それがいかに大切な風習であったかが伺えます。また、単なる行事を超えた、神聖かつ儀式的な意味合いも持っていたことでしょう。
平安時代の人々がどれほど煤払いを重んじていたか、その姿勢からも感じ取ることができますね。
なぜ12月13日なの？〜江戸の煤払い〜
平安時代から続く煤払いの習慣は、室町時代に入ると寺社仏閣での行事として位置づけられました。
時が流れ、江戸時代が訪れると、煤払いは一般庶民にも広まりを見せたのです。
これは、徳川幕府が旧暦の12月13日を「煤納め」と指定したからであります。
この日は「鬼宿日」と称される吉日であり、鬼が外出を控えるという言い伝えから、婚礼を除く様々な事柄に吉とされた日でもありました。
12月13日に煤払いを行うことで、奉公人や徒弟たちが新年に向けての里帰りの準備期間ともなっていました。
結果として12月13日は階級に関わらず一斉に煤払いが行われる日となり、長屋から大名屋敷までに及びました。
なお、祭事や慣わしを愛する江戸の庶民は、煤払いの後に胴上げや銭湯通い、盛大な宴会を楽しんだとされています。
大奥の女性たちが胴上げされた絵画も残っており、格式のある行事から一種のお祭り騒ぎへと変わりつつあったことが伺えます。
煤払いが終わり次第、お正月準備のための買物をする「歳の市」が開かれ、江戸の街は一層賑わいを見せたといいます。
煤払いと大掃除の違いとは
結局のところ、煤払いは大掃除に近い存在だと言えるでしょう。平安時代には、新しい年を迎えるために歳神様をお迎えする神聖な意味合いを持っていた煤払いは、江戸時代へと移り変わるうちに、年間の慣例的なイベントへと変容していきました。
そして、江戸時代が終焉し、大正、昭和、そして現代へと進むにつれ、煤払いという表現は次第に使われなくなり、「大掃除」という言葉が一般的となっていったのです。
言うなれば、煤払いは大掃除の原点であったわけです。現代における大掃除の文化や風習の背後には、こんな歴史があったのですね。
おはようございます！
今日は #掃除の日 🧹✨
日本では平安時代から「煤払い」という大掃除の習慣がありました🏯
掃除をすると運気が上がるとも言われますね😊
今日は身の回りをキレイにして、気持ちもスッキリさせましょう！#企業公式が朝の挨拶を言い合う#企業公式秋のフォロー祭り— TOSEI コインランドリー公式 (@tosei_coin_biz) September 23, 2024
掃除の歴史と現代への連綿
かつて「煤払い」と呼ばれる行事は、今日の我々が行う「大掃除」の起源となっています。江戸時代には、旧暦の12月13日を定めてこの風習が盛んに行われていたのです。煤を払い清掃する作業が終了すると、まるでお祭りのような賑わいで一年の終了を祝したと言います。
常に時間に追われる現代社会に生きる私たちにとって、掃除という作業は時に負担と感じられることもあります。しかし、その重い腰を上げてしまえば、清掃の後には心地よさが広がるものですね。
江戸時代の住民は、雑事をも洒落と粋で乗り越えることから学ぶべき点が多いと感じます。その精神を継承し、大掃除後のご褒美や楽しみを設けて乗り切ることが、一年の有終の美を飾る秘訣ではないでしょうか。
きれいになった我が家で、年の瀬を迎えることを楽しみにしている筆者でした。
